特集・コラム

Garden Lab 株式会社

京都市下京区

京都市下京区に位置するガ―デンラボは、伝統的な京町家の建築様式で作られたコワ―キングスペ―スです。今回のインタビュ―では、ガ―デンラボを創業された経緯や、コワ―キングスペ―スとしての魅力などを、代表取締役のDrew Wallin様に伺いました。

代表取締役 Drew Wallin さん

- まずはガ―デンラボを創業された経緯を教えてください。

Wallin 2009年当時、カナダにあるブリティッシュコロンビア大学で日本語科目を専攻していました。留学できるプログラムだったので、立命館大学に1年間留学することに決め、京都に滞在することになったのです。日本文化全般を研究するよりも、テ―マをより絞って研究しようと思っていたところ、京都で実施されたホ―ムパ―ティ―で京町家に出会い、「これは」と思い感銘を受け、京町家について研究し始めました。

研究を進める中で、京町家が続々と取り壊されていることがわかりました。私はこれを大きな社会課題だと感じたため、文部科学省の研究生として研究できないかと考え研究奨学金に応募してみたところ、幸いにも合格。そこで私は、京都大学の高田光雄教授(当時。現在は京都大学名誉教授)のもとで「京町家とは」というテ―マで研究することに決めました。研究を進める中で、京町家には「中庭」や「通り庭」など様々な種類の「庭」があることや、「外」と「内」の曖昧な表現の仕方などについて非常に面白いと感じました。

その後、カナダに戻った私はAppbridgeというソフトウェア会社を創業し、その子会社としてAppbridge Japanを日本で立ち上げました。お客様が東京に多かったこともあり、最初は東京でオフィスを探そうと考えました。しかし、東京のオフィスはコストが高く予算に合いませんでした。2014年当時、既にIT業界ではリモ―トワ―クが普及していたので、「オフィスは東京でなくても良いのではないか」と思い、京都に戻り、京町家スタイルのオフィスに入居することになりました。

仕事柄、大手IT企業のオフィスに訪問することが多かったので、当時Appbridge Japanが入居していた京町家スタイルのオフィスと比較することができたのです。確かに、大手IT企業のオフィスは利便性が高く、魅力的でした。しかし、私としてはこれらのオフィスからは「人間性」や「自然」といったものが失われているのではないか、と感じました。

一方で、当時のオフィスとなっていた京町家では、夜になるとオフィスも暗くなりますし、庭を見ながら四季の移り変わりを感じられたりするなど、自然を感じながら人間らしく働くことができました。これが私にとっては非常に大きな出来事でした。

私が実体験を通じて「人間らしい働き方ができる」と感じた京町家スタイルのオフィスを多くの方々にも提供したいと考え、ガ―デンラボを創業しました。

― ガ―デンラボの魅力について教えてください。

Wallin 1階のラウンジスペ―スからは庭の空間が見えます。元々壁だったのですが、開放できるようにガラス扉にしました。「どこが外で、どこが内かわからない」という曖昧な表現ができるので、自然と調和した空間が演出でき、自然を感じて働きたい方にとっては非常に魅力的に感じるはずです。庭との出入りもしやすいです。

2階はオフィススペ―スで、静かな空間です。京都の都心部に立地しているにも関わらず、非常に仕事に集中しやすい点がポイントです。実際に多くの入居者の方が集中して勤務されています。周りにも京町家が多いこともあり、集中しやすい環境を実現させています。

私自身、Appbridgeという企業を創業し、Appbridge Japanをその子会社として日本で設立し、運営してきた経歴があります。Appbridgeは最終的にGoogle社に買収されました。このように、スタ―トアップ企業の創業・運営・エグジットに至るまでの経験があるので、入居されているスタ―トアップ企業に対して体験に基づいたビジネスコンサルティングサ―ビスも提供しています。特に、海外からビジネスを持ち込んで日本で成長させたい、あるいは日本から海外にビジネスを持ち込んで成長させたい、そのような思いをお持ちの方にはお役に立てると思います。日本特有の行政への申請などの課題やビジネス戦略、会計面でのアドバイスなども可能です。この点もガ―デンラボの魅力です。

ガ―デンラボ内では様々なイベントも実施しています。合宿をしたり、お客様と一緒にミ―ティングをしたり、コワ―キングスペ―スで打ち上げをしたりもしています。最近では音楽イベントやア―トイベント、ビアガ―デンイベントなども実施しました。ガ―デンラボではこれらのイベントを実施することで、ビジネスそのものだけでなく、コミュニティ形成についても支援しています。

― ガ―デンラボの入居者にはどのような方が多いのでしょうか。

Wallin ガ―デンラボの入居者のほとんどはスタ―トアップ企業です。最初はIT系のスタ―トアップ企業の開発者が多かったですが、今では入居者の職種もバラバラです。外国企業と日本企業の入居者の比率はちょうど半分ずつくらいですね。

ガ―デンラボでは入居の前には面談を実施しています。私たちのコワ―キングスペ―スに入居することで、入居者の方に意義のある支援ができるかどうかといった点について判断するためです。

― ガ―デンラボの今後のビジョンについてお聞かせください。

Wallin 現在もスタ―トアップ企業の入居者が多いですが、今後さらにスタ―トアップ企業の方が増えてくれば、一緒にコラボレ―ションしてプロジェクトを生み出せる可能性もあるかな、と考えています。我々としては、そういったプロジェクトを生み出したいという狙いもあり、このガ―デンラボを運営しているところもあります。

一緒にプロジェクトを生み出せれば一番楽しいかなと考えているので、新しいタイプのインキュベ―タ―、コラボレ―タ―のような姿を目指しています。

― Wallin様の視点で京都の魅力をビジネス面・住環境の両面で教えてください。

Wallin 京都では「タレントが見つけやすい」と言われていて、私も実際にそう思います。ビジネスで必要な人材を採用しやすい点は非常に魅力的だと思います。

京都はコミュニティの中での繋がりが強く、コミュニティに一度入ってしまえば信頼関係を築くことができて人材同士の連携がスム―ズにできる点は、ビジネス上の大きなメリットだと感じています。

また、京都はヒュ―マンスケ―ルが残っている町で、都心にも関わらず圧迫感なく落ち着いて生活できる点も気に入っています。

ガ―デンラボは下京区に位置していますが、裏道を散歩していると素晴らしい場所をいつも発見できます。私は南木屋町や建仁寺の奥、祇園の近くが特にお気に入りです。落ち着かない時などは、鴨川沿いや祇園の周辺をよく散歩しています。

京都は和食も非常に美味しいですし、地元のお酒などもあるので、仕事以外の生活面での充実も期待できます。外国からいらした方にとっても、ガ―デンラボの近くには魅力的なお店がたくさんあると感じています。自由に歩きながら冒険することができる点は、海外の方には特に魅力的に感じるのではないかと思います。

京都は盆地なので暑いですが、ガ―デンラボは京町家なので夏でも風通しが良く、打ち水などをすると比較的涼しく過ごせます。

次に、実際にガ―デンラボを利用されているPieces of Japan代表取締役社長のTina Koyama様に、利用者視点からガ―デンラボの魅力を伺いました。

Pieces of Japan創業者 代表取締役社長 Tina Koyama 様(写真右) 、取締役・COO Hana Tsukamoto 様(写真左) 

― どのようなビジネスを展開されているのでしょうか。

Koyama Pieces of Japanでは、日本の伝統工芸品の技術を活かした商品開発・販売事業を展開しています。母親が伝統工芸関係の仕事をしていたので、日本の伝統工芸産業が苦しい状況に立たされていることは知っていました。私は元々シリコンバレ―のTwitter社でアプリ開発の仕事をしていたのですが、同僚たちには日本好きな人が非常に多く、日本の伝統工芸品にも興味を持っている状況も知っていました。元々来日することは決まっていたので、日本にある伝統産業支援のニ―ズとシリコンバレ―にある日本への興味のニ―ズを繋げれば、伝統産業を支援できると思い、今の会社を創業しました。

― ガ―デンラボに入居された経緯を教えてください。

Koyama 当時、登記できるコワ―キングのオフィスを探していました。探していたコワ―キングスペ―スの中では、ガ―デンラボは特に雰囲気が良く、代表取締役のDrew Wallinさんとも元々知り合いだったので、入居を決めました。

― ガ―デンラボを実際に利用してみて感じた魅力について教えてください。

Koyama 京都に居ながらにしてインタ―ナショナルな環境があるギャップが魅力に感じます。また、我々のような小さな企業にとっては、コワ―キングスペ―スらしくフレキシブルに利用できる利便性も魅力です。イベントなどに出席しても、面白い人が集まっているなと感じました。

伝統工芸品の商品開発をしているので、伝統工芸職人の皆さんとコラボレ―ションするのに最適な立地であることも私にとっては魅力でした。

まだコミュニティの中でコラボレ―ションできるような方とは出会っていませんが、今後そのような方と出会う可能性も感じています。