コワーキングスペース Voltage京都
京都市上京区
Voltage京都は、京都御所が近く人通りの多い今出川通り沿いに建つビルの1階で運営されているコワーキングスペースです。「意志ある共創を」というコンセプトのもと、単なるコワークスペースではなく学生同士や学生と企業のつながりが広がっていく場所として注目されています。今回のインタビューでは、Voltage京都の設立経緯や魅力について、運営者である株式会社VMK代表取締役の田中様にお話を伺いました。
株式会社VMK 田中 優大さん
― Voltage京都を立ち上げた経緯について教えてください。
田中 大学1年生の終わり頃に何か始めたいと思い、NPOと協力してカンボジアの学校校舎をリノベーションする教育支援を行う学生団体に所属しました。その活動の中で、社会課題の解決や社会貢献を本気でやっていくなら継続性が不可欠だという思いを強く抱きました。1回で終わってしまうソーシャルインパクトよりも継続的に変化し続けながら利益を循環していくことが重要で、それは経済活動でしか成し得ないと考えて、2年生の時に京都大学と同志社大学の学生を30人ほど集め、自分たちのアイデアを形にしてお金を稼ぐ経験をすることを目的とした学生団体をつくりました。
当時は大学生がつながれる環境がありませんでしたから、横のつながり、それも就活ではなく起業に挑戦したいと考える学生同士がつながれる場をつくりたいなと。自分の意志を持って挑戦する自走力にあふれた学生が増えてほしいという思いで、1年半前に会社設立と同時にVoltage京都を立ち上げました。資金の準備はクラウドファンディングを利用したのですが、目標300万円に対して368万円の支援をいただいたのはありがたかったですね。
― Voltage京都の特徴はどういったところでしょうか。
田中 起業志向が強く、個人事業主として活動している学生の割合がとても多いのが特徴のひとつです。他の学生向けコワーキングスペースだとおそらく1割いるかいないかといった感じだと思いますが、Voltage京都ではユーザーの4割くらいを起業志向の学生が占めています。ウェブ制作や動画制作、漫画を描くなど自分の得意分野をひとつ決めて活動している学生が多いですね。
地元の中小企業や東京の上場ベンチャーなど企業とのつながりが強いという点も大きな特徴です。Voltage京都を立ち上げたのは緊急事態宣言が出たばかりの頃でしたから、スペースをイベント会場として使ってもらうプランが実現できず、学生は無料で利用できる設定にしていたこともあってコワーキングスペースではマネタイズできないため、学生同士がつながる場に加えて起業志向の学生がよく来るというコンセプトに路線変更してプロモーション活動を行ったところ、さまざまな企業とつながりができました。企業と学生でプロジェクトをつくったり、新規事業開発のインターンシップを構築したり、ウェブ制作などのスキルを持った起業志向の学生を企業に紹介したりととても活発です。コワーキングスペースというよりはスペースを持っているビジネスマッチングのコミュニティという位置づけですね。
― Voltage京都が立地するエリアの魅力について教えてください。
田中 京大生や同志社生が多く利用する京阪出町柳駅から徒歩4分とアクセスがよく、今出川通り沿いに面したビルの1階ですから来店ハードルは低いと思います。名古屋や東京、大阪での仕事の機会が増えて感じたのが、京都は行政や地域の企業が若者のスタートアップや挑戦をしっかり推進していこうという動きがあること。予算的な面でもイベントなどの取組みの面でも動きが早い点はすばらしいと思います。
― Voltage京都を利用している方はどのような方がいらっしゃるでしょうか。
田中 利用者のほとんどは京都府内の学生です。年間の利用者数は約4500人、京都大学と同志社大学の学生がそれぞれ3割を占め、その他の大学の学生が4割という比率です。社会人のユーザーも現時点では6~7人と少ないですが、利用に関する問い合わせが増えてきました。
利用者の方からは、集まってくる人の熱量がとても高く、触発されて自分もやる気が出るという声はよくいただきますね。自分にないもの、足りないものを補い合えるような関係を見つけたり築いたりできる点を喜んでいただいています。
― Voltage京都の今後の展望について教えてください。
田中 今後の社会は、個人が自己表現するように経済活動を行う時代が加速して、意志ある孤立という選択をし、挑戦する人たちが増えていくだろうと考えています。そんな人たちが共創する世界を生み出せるよう、スタートアップや起業の領域で学生と企業の接点づくりにフォーカスしていきたいです。
学生団体を運営していた頃、当時お付き合いいただいていた社長4~5人から「たくさんの経営者と会うように」とアドバイスを受けて、120人以上の社長とお話しした経験があります。先輩経営者の創業経緯やビジョンを知ることができるだけでなく、成功と失敗を追体験できる等学べることが本当に多いので、拠点を利用する学生には経営者と話す機会をたくさん持ってほしいと思っています。学生と経営者が話す機会として食事会などのイベントも今後スペースを使って企画したいですね。
これまでは週2日定休日を設けて午後だけオープンしていましたが、もっと色々な使い方ができるようにしたいという利用者の声と、Voltage京都ユーザーと経営者を直接マッチングするプラットフォームの構築を見据えて、2021年12月からは年中無休、営業時間も9~20時と大幅に拡張しました。
有料でも利用したいという学生ユーザーは多いですが、立ち上げ当初の学生無料という文化もなくしたくないので、ドロップインなら学生は2時間無料に設定しています。月会費は全日利用プランで学生は2,500円と非常に安価で、社会人でも6,000円と他のコワーキングスペースと比べ半額程度の料金体制ですから、今後社会人の利用も増えると考えています。
また、株式会社VMKの展開にはなりますが、2021年7月には第2号店を名古屋にオープンしました。コロナによるテレワークの加速化で不要になった企業のオフィスの一部やホテルのラウンジを活用したコワーキングスペースを企画中で、東京や大阪に展開していこうと考えています。