特集・コラム

けいはんなプラザ

精華町

けいはんなプラザは、けいはんな学研都市の文化や学術・研究交流などを総合的に推進する目的で設立された中核施設です。研究実験やオフィスとして利用できるラボ棟、最先端研究が可能な設備を整えたスーパーラボ棟、1000人が収容できる音楽ホール、イベント会場、大小8つの会議室の他ホテルなど様々なビジネスシーンを多角的にサポートする交流棟で構成され、官民を問わず多様な業種の企業が入居し活発に活動しています。
今回のインタビューでは、けいはんなプラザの設立経緯や魅力について、運営会社である株式会社けいはんな常務取締役の熊谷様にお話を伺いました。

株式会社けいはんな常務取締役 熊谷さん

― けいはんなプラザを設立された経緯について教えてください。

熊谷 関西文化学術研究都市の交流拠点として1993年にオープンし、2023年に30周年を迎えます。研究や開発を入居企業様に行っていただけるのはオフィス機能があるラボ棟で、80㎡の標準ルーム、標準ルームを半分にした40㎡のインキュベートルームとスタートアップルームがあり、現在入居率は90%を超えています。ただ、本年3月末に大口入居者が移転されるためスペースは十分にあります。

― けいはんなプラザの特徴はどういったところでしょうか。

熊谷 けいはんな学研都市は京都・大阪・奈良の県境に位置しており、「東のつくば・西のけいはんな」と称されています。“つくば(筑波研究学園都市)”が国の省庁の研究機関が集まっているのに対して、けいはんな学研都市は国の機関もありますが民間企業の研究施設が多く立地しているのが大きな特徴です。

ここは職住一体として住宅地もあわせて開発されており、入居企業が研究している内容について住宅エリアの住民を対象に実証実験できるという点も特徴です。勤務されている研究者の皆さんと住民の皆さんとが交流できる場を設けて、意見交換や新たなビジネスアイデアを見つけられるという可能性も期待していただきたいですし、研究施設だけでなく大学や企業などがそれぞれいろんな研究をしておられますから、オープンイノベーションの活発化がめざせるのではないかと考えています。

実際に行われた実証実験の例として、IT技術を活用する企業がスマホでオンライン予約できるオンデマンドバスの運用や、体に発信機をつけて心拍数や血圧などをリアルタイムで管理し異常をすぐ検知できるシステム、公道を使った自動車の自動運転実験などがあります。。学研都市の研究を身近で感じたいという参加意欲が高い住民が多くいらっしゃるので、企業としても実証実験がしやすいのではないでしょうか。

関西文化学術研究都市推進機構という組織が国や研究機関、企業との窓口を担当していますから、入居企業に加えて外部企業の力も借りた研究や実験をしたいという場合も対応可能です。

スタートアップルーム

― けいはんなプラザを利用されている方はどのような方がいらっしゃるでしょうか。

熊谷 入居企業の規模はさまざまです。本業は順調であっても先の見えない時代に今後に備えて新しい研究や開発を、少し目先を変えて違う場所でやってみたいという企業もいます。会社内で進めていると会社独特のしがらみにとらわれがちなので、やりたいことを自由に進めたいという目的のようですね。規模は大きくなくても、10年先20年先には日本の主流となるような可能性を秘めた先進的な開発をされている企業が多いと感じています。

ご入居いただいている業種は多岐にわたっていますが、iPS細胞を研究している理化学研究所のバイオリソース研究センターがスーパーラボ棟に入居されている関係でバイオ系のベンチャー企業は多いですね。CO2削減に取り組んでいるRITE(公益社団法人地球環境産業技術研究機構)が入っておられるので環境関係の企業もいらっしゃいます。その他IOT・情報通信関係の企業、税理士や社会保険労務士などの専門家も士業事務所としてオフィスを構えておられますよ。

これからは、消費者のニーズが多様化する中、自社の技術だけでやっていくのは難しい時代ですから、オープンイノベーションは不可欠になっていくでしょう。いろんな業種や規模の企業が集まっているので、ビジネスチャンスが広がりやすいという利点を活用されているのではないかと思います。

― けいはんなプラザの今後の展望について教えてください。

熊谷 当プラザには80を超える研究施設・企業が集積していますので、そこで働いている研究者の皆さんをつないでいくのが最大の存在意義だと思っています。今はコロナの影響でイベントが開催しにくい状況ではありますが、他のインキュベート施設と連携していろんな企画を形にしたいですね。京都と大阪はすでに連携していますので、次は兵庫を含め関西全体を底上げしていきたいと考えています。

けいはんな学研都市が生まれて30年。研究施設が増えてきて支援体制の土台がしっかりできてきました。今後はもっと動きを加速させて、創業したばかりの企業がいろんな支援サービスを受けて成長し、卒業して羽ばたいていっていただくというスタートアップエコシステムをしっかり醸成させていきます。

― けいはんなプラザが立地する精華町の魅力について教えてください。

熊谷 京都・大阪・奈良の各県境にある小高い丘にある静かな環境ですが、京都市内と比べるとやはり交通面では不便と言わざるを得ません。しかし大阪からですと大阪メトロ中央線の学研奈良登美ヶ丘駅やJR学研都市線の祝園駅が、京都からですと近鉄京都線の新祝園駅が最寄り駅。それぞれ約15分バスに乗りますが、通勤時間帯だと1時間に10本以上走っていてほとんど待つこともなく不便に感じることはあまりありません。

飲食店やスーパーの他にホームセンター、100円ショップなどの商業施設が近くにあります。ものづくり系の企業の方からは「研究中に必要になった簡易的な部材をすぐ手に入れられて便利だ」といったご意見をよくいただきます。

― けいはんなプラザを利用される方はどのようなご感想をお持ちでしょうか。

熊谷 日本を代表する世界的な研究施設との情報交換やビジネスマッチング、入居企業だけでなく広範囲な企業とのつながりをもっとサポートしてほしいという声は多いです。また、スタートアップ段階のベンチャー企業は社長一人で研究開発から資金調達、法務・税務など幅広くやらなければいけませんので、このあたりのフォローをしてほしいとの声もあります。弁理士、税理士や社労士が同じ建物にいますから、何かあった時にすぐ相談できるというメリットを生かして、今後無料のセミナーや相談会をどんどん開いていきたいですね。

スタートアップ企業は高い技術力を持っていても売る手段がなく、業績につながらないと事業が継続できないという苦しさがあります。そのため、スタートアップ企業の事業を多くの方に紹介し、資金獲得の場としてピッチ会というイベントを開催しています。2021年12月には、京都府と大阪府にある6つのインキュベート施設が集まって合同ピッチ会を開催しとても好評でしたから、こうしたサポートを今後も積極的に進めていきたいと考えています。

KeDDiiALPHA 毛戸社長

〜入居企業の声・KeDDiiALPHA 毛戸様〜

毛戸 以前からけいはんな学研都市に関心があったのですが、株式会社けいはんなのアドバイザーの方とお会いした際に、新しいものを創造することが好きというイメージを私に持ってくださっていて「けいはんなプラザへ来ませんか」とお誘いいただいたのが入居を検討したきっかけです。実際にけいはんなプラザに足を運んでサポート体制や利用のメリットなどについて説明を伺っていると、大学時代に貸しブースを借りて創業した時の勢いある感じを思い出しまして、自分で新しい何かを創り出したいという今の立ち位置にちょうどフィットすると感じたんですね。その後事業再構築補助金の交付決定を受けることができたので、それを機に入居しました。まさに縁と縁がつながったという感じですね。

現在入居して5ヶ月ですが居心地は最高です。地区全体が閑静なのでゆっくり散歩できる環境のよさを感じています。スタートアップ企業に対するビジネス的な環境、イノベーションを求めて集まっている人たちと同じ志を共有しているという仲間意識や高揚感を体感できるのが心地いいですね。

そもそも今借りているスタートアップルームはデスクを置いた従来のようなオフィスにはしていないんです。ソファを置いて、リラックスしながら仕事できる空間、いるだけでアイデアが出てくるような空間にしています。今後やりたいビジネスモデルはクリエイティブな人たちを相手にする内容ですから、既存の製造業の枠を取り払ったところに身をゆだねて客観視できる環境にいたいという気持ちでフリースタイルなオフィスにしたのがよかったですね。

今から手掛けていくビジネスモデルは、鉄板を切って曲げて溶接するという板金業の3工程のうち切るという部分に完全特化したシステムです。お客様からデータが入稿されると自動で見積を行い、プログラムを自動で作り、発注が入ると切断作業をして納品します。弊社を含め周辺の板金加工工場の切断稼働率は、24時間稼働として計算すると20%前後ですから、残りの80%は人に貸せるなと思い立って取り組み初めました。工場にある設備を生かせるという視点ではBtoB、DIYなど鉄板を使った小ロットの製品を一般ユーザーが求めやすくなるという視点ではBtoCと幅広く展開していけると考えています。

今後は、人との交流を積極的にしたいです。けいはんなプラザにはさまざまな分野の企業が数多く集まっていますから、入居している他の企業との接点が増えていったら嬉しいですね。