特集・コラム

うまし宿 とト屋

京丹後市

海辺のうまし宿とト屋は、京丹後市北部にある丹後半島にある間人温泉郷で運営されている旅館です。「家族で暮らすような旅をする」というコンセプトのもと、丹後半島ならではの食や自然を堪能できる環境で仕事をする新しいスタイルのワーケーションが注目を集めています。

今回のインタビューでは、旅館という立場を生かしたオリジナリティあふれるワーケーション・とト屋ファミリーワーケーション「ファミワケ」を開始した経緯やその魅力について、とト屋女将の池田様にお話を伺いました。

― とト屋ファミワケを始めた経緯について教えてください。

池田 通常業務は宿泊業ですが、2014年に農林水産省や経済産業省、国土交通省の認定を受け京丹後龍宮プロジェクトを立ち上げ、「京丹後龍宮の玉手箱」という体験プログラムを運営しています。

観光地でテレワークを行いながら休暇を取るというワーケーションの対応施設として、ワーケーションの企画を進めてみませんかという提案をいただいたことをきっかけにワーケーションについて調べてみると、うちにぴったりだと思いました。私の子どもが小さいころ、夫の出張の際は一緒について行き、日中は子どもと好きなところへ出かけ、夜は家族で一緒に過ごすという今のワーケーションに近い経験をたくさんしたことがありましたから、同じような形や、一週間出張で仕事をする中で週末に家族がやってくるといった形で利用していただけるのではないかと。

宿泊はできる、豊かな自然も楽しめる、すでにある「京丹後龍宮の玉手箱」で地元ならではのさまざまな体験をしてもらえる。一人でももちろんいいのですが、ファミリー対象のワーケーションにしっかり対応できると思い、ファミワケを始めることにしました。

― とト屋ファミワケの特徴はどういったところでしょうか。

池田 テレワークの方だけでなく、幅広い業種の方にご利用いただける環境が整っていることが大きな特徴です。たとえばホールにはピアノがありますので、大阪や京都へ公演に来られたピアニストがこのホールで練習して、公演を行って、ついでにちょっと丹後の自然を楽しむといったケースがありました。自然が豊かで地元の旬の料理を味わえる、ここでしかできない体験プログラムに参加できる環境は、五感が刺激されてイメージが膨らみやすいと思います。

最近注目されているドローンも飛ばし放題ですから、教育プログラムとして子どもや学生、大人まで体験できるワーケーションとしてご利用いただくこともできます。

とト屋はワーケーション施設ではなく宿なので、宿の女将がどんなワーケーションを提供するかというところが腕の見せ所です。丹後の食材を使って調理体験をしたり、丹後の地酒を楽しんだり、シーカヤックでジオパークを体感し、漁師さんの小舟で青の洞窟を見学したり、バリエーションは数えきれません。ただ仕事をして休むというのではなく、仕事+丹後でしかできない体験を通して仕事も人生もレベルアップしてもらえる場所として活用していただきたいですね。

― とト屋ファミワケを利用している方はどのような方がいらっしゃるでしょうか。

池田 さまざまですね。実家のように使ってくれている自由業の女性は、仕事に煮詰まったら来られてワーケーションされていますよ。日頃忙しくて食事に気を使っていられないというので、自然の中で暮らしてもらい、健康食を提案し、温泉で疲れを癒してもらうことも多いです。ファミリーで来られて、丹後ちりめんの体験や自然の中で子どもたちが遊んでいる一方でお父さんは働くとか、バックパッカーの外国人もいらっしゃいますね。

ニーズや好みに合わせて仕事環境やプログラム体験の環境を準備するという、宿ならではのおもてなしでこまめに対応する点は喜んでいただいています。会議室やWi-Fiといった設備を整えるだけがワーケーションではありませんし、パソコンを持ってテレワークをしている人以外も利用していただくと、よさを実感してくださるようですね。

― とト屋ファミワケの今後の展望について教えてください。

池田 五感を刺激される要素がたくさんありますので、芸術関係のお仕事をされている方にもっと利用していただきたいです。一般企業の方だと、アイデア出しの会議を社内の会議室ではなくここでするのも視点が変わっていいのではないでしょうか。

体験プログラムについては、プログラム内容だけでなく人を紹介したいです。各体験プログラムの中で教えてくださる地元の皆さんはすべて達人、レジェンドです。レジェンドの仕事を体験し、自然の中で五感を養い、レジェンドに会うことで学びを得て、日常の仕事に戻った時頑張ろうと思える、仕事をしながら異業種の人と出会って学べる、そんなシチュエーションの中でブラッシュアップしたことを仕事に循環できる場所と思っていただくことが目標です。

丹後という街をPRしながらワーケーションで来てくださる方に丹後ファンとなっていただき、丹後に移住したいなと思ってくださる、そこまでサポートできればうれしいですね。

― とト屋が立地する間人エリアの魅力について教えてください。

池田 山も海も里も楽しめるというのが大きな魅力ですね。依遅ケ尾山をはじめとした野山ではハイキングに立岩から丹後王国めぐりはウォーキングやサイクリングが楽しめますし、青の洞窟や愛の洞窟、犬ヶ岬などの絶景も遊覧できます。

バケーションの面は最高の提案ができますよ。

― とト屋を利用されている方はどのような感想をお持ちでしょうか。

池田 全館Wi-Fi完備ですから、仕事がいつでもどこでもできる点は喜んでいただいています。一般的なワーケーションというよりも、宿ですので旅行や気分転換の目的で来た時に仕事もでき、いろんな体験もあわせて楽しめるといった自然体のワーケーションが可能なところがいいというお声は多いですね。もう一つの家、ファミリー的な自然なおもてなしがリラックスしながら、仕事も遊びも楽しめ、安心できると言われます。私は女将さんではなく、とト母さんというニックネームが与えられましたよ。