特集・コラム

COVO

京都市北区

京都市営地下鉄鞍馬口駅から徒歩0分の好立地に2階は木のぬくもりを感じさせる内装が印象的なフリーアドレス制コワーキングスペース、3階は10室の完全独立型個室と開放的な雰囲気の会議室・ブース席が設けられているCOVO。京都初のクリエイター支援型シェアオフィス・レンタルオフィス施設として、2023年1月にオープンしました。フリーランスのクリエイターや個人事業主が創造性を最大限に発揮できるよう、ハード面とソフト面の双方からビジネスを支援する体制を整えています。

今回のインタビューでは、COVOの設立経緯や特徴、今後の展望について、運営会社である株式会社ワードの代表取締役廣田様にお話を伺いました。

株式会社ワード 代表取締役 廣田様

― COVOを設立された経緯について教えてください。

設立のきっかけは2つあります。ひとつは出版業界全体の斜陽化です。弊社は編集プロダクションとしてWeb制作や書籍制作、企業を対象としたインタビュー、広報誌の制作といった事業をしていますが、インターネットが普及して企業が印刷物を制作しなくなってきた影響で、案件の予算削減や案件数自体の減少が続いてきました。出版業界全体が縮小していく流れの中で、今のうちに出版業以外の事業をもう一つ作っておかないといけないという危機感に背中を押されたというのはあります。

もうひとつは、クリエイターを支援したいという思いです。弊社は私の父が創業した会社で、9年前に事業承継を行ったのですが、サラリーマン時代は企業の広告マーケティング担当、ワードに入社直前は起業してウェブ制作とウェブ集客の会社をしていました。なので、少し違いますね。私が提案したさまざまなアイデアを形にしてくれるのは、デザイナーさんでありライターさんやカメラマンさんです。彼らクリエイターにお願いすることで仕事が成り立ってきましたから、支援や育成といった方法で彼らのようなフリーランスのクリエイターを応援したい、事業として立ち上げて本格的に取り組みたいという考えがずっと頭の中にありました。

いろいろ考えていく中でシェアオフィスというアイデアが出てきたのですが、同じシェアオフィス事業をするなら、クリエイターを支援すると同時にクリエイターが利用しやすい場所を提供しようと。このアイデアの実行にあたっては、シェアワークスペース事業を通して起業支援をされている株式会社あきない総合研究所様のサポートを受けました。これまでなかなかアイデアが形にならずマネタイズもできない状況が続いていたのですが、事業承継ということで事業再構築補助金の活用をアドバイスいただいたこともあって、アイデアがしっかり形にできたのがうれしいですね。

オープンしてまだ2ヶ月で今後も試行錯誤が続きますが、クリエイター支援は私にとってずっとアイデアを練り続けて「これだ!」と確信した事業です。ライフワークとして取り組み、今後さまざまなサービスを拡大していきたいと考えています。

― COVOの特徴はどういったところでしょうか。

基本コンセプトが「クリエイター向けシェアオフィス」なので、フリーランスになった後もストレスなく制作活動ができる設備を備えている点が大きな特徴です。会社に勤めているクリエイターは、使える機材が豊富で制作環境が整っていますからスムーズに制作を進められますが、フリーランスのクリエイターは機材を準備することすら難しい場合がありますよね。制作環境を整えるのが大変だと、フリーランスになることへのハードルが高くなりますし、フリーランスになった後も制作時のストレスが増えます。フリーランスになっても同じ制作環境で仕事ができる場所として活用していただきたいです。

ソフト面では、人脈の構築や自身のスキルアップを目指せる機会の提供ができる点を特徴として打ち出しています。フリーランスになる不安として大きいのは、仕事が取れるかどうかですから、人脈を広げていくための交流会やクリエイターとしてスキルアップしていくための勉強会、フリーランスにとって重要な経営やマーケティング、税務手続きなどの知識を身につけられる講座を計画中です。

弊社とお付き合いがある税理士さんに講師をお願いして、会員様限定のインボイス勉強会を3月に開催しましたがとても好評でした。ゆくゆくは会員さん主体で勉強会を企画してもらうのもいいかなと思っています。

― COVOを利用されている方はどのような方がいらっしゃるでしょうか。

現状ではクリエイターに集中しているわけではなく、システム系やコンサル系、士業、リモートワーク中の会社員、外国人など業界も職種もさまざまで、法人より個人の方がドロップイン利用しているパターンが多いです。いろんな年代の方がいらっしゃいますが、中心は30~40代の方ですね。近くにお住まいの方の利用や問い合わせも増えています。

― COVOの今後の展望について教えてください。

シェアオフィスというと単なるスペース貸しがメインの場合が多いですが、クリエイターの方には、ビジネスが成長発展していくためのプラットフォームとして認知してもらえるようになりたいですね。一方で、京都の企業の皆様には、クリエイティブ系の課題を気軽に相談できる場所として活用してもらえるようになりたいです。

大企業と違い、中小企業にはマーケティングなどの専任担当者がいないことが多く、なかなかPRやブランディングのためのクリエイティブにまで手がまわらないことも多いと思います。京都の中小企業が、クリエイティブの課題を抱えたときに、気軽に相談していただけるといったイメージです。

弊社が受けた案件のイラスト部分を会員のイラストレーターさんにお願いするとか、クリエイティブ系の方中心の交流会でライターさんとカメラマンさんがつながって新しいビジネスを展開するとか、能動的にそんな状況が広がっていくと面白くなると思うのです。

近くのエリアに点在している大学の学生と現役クリエイターとの交流、クライアントと会員さんとのビジネスマッチングといった機会も増やしていく予定です。「京都でフリーランスのクリエイターになるならここで活動しておきたい」と言われるような、京都のクリエイティブカルチャーの発信基地をめざしたいですね。

― COVOが立地する小山下総町エリアの魅力について教えてください。

広さ100坪程度の物件が希望だったのですが、ビジネスの中心街である四条通や京都駅周辺エリアは予算的に難しいこともあり、広さと家賃とのバランスでこの場所を選択しました。結果として、京都市営地下鉄鞍馬口駅の真上というのはとても幸運でした。

周辺に同志社大学や大谷大学などがあり、さらに北側には京都芸術大学や京都精華大学といったクリエイティブ系の大学があるので、将来的にめざす形のひとつであるクリエイター育成にも取り組みやすい環境だと感じています。

― COVOという名称が印象的ですが、どのような由来がありますでしょうか。

名称の由来は「工房」です。クリエイティビティを想起させるキーワードでコンセプトに合っていると思い選びました。調べてみると、COVOにはイタリア語で「隠れ家」「アジト」という意味もあるんですよ。クリエイターが集まる場所にはぴったりなダブルミーニングなので、たくさんのクリエイターに気に入ってもらえるとうれしいですね。