特集・コラム

Mushroom

京都市右京区

個性的なデザインながら京北の豊かな自然に溶け込む外観が印象的なクリエイティブスペース&カフェMushroom。会員制レンタルオフィス・コワーキングスペース・カフェの3つの施設を備え、有形無形のものづくりに携わるクリエイターをはじめ幅広い年代の利用者が集う場として2022年8月にオープンしました。

京北ならではのロケーションや木材を使用した内装など、都会の喧騒を離れてリラックスしながら仕事に取り組める環境が整っています。

今回のインタビューでは、Mushroomの設立経緯や魅力、今後の展望について運営会社である株式会社村山木工の代表取締役 村山様にお話を伺いました。

 


株式会社村山木工 代表取締役 村山様

― Mushroomを設立された経緯について教えてください。

弊社は京組子の技術を生かした家具や建具、調度品、照明などを制作しており、京北町にアトリエを構えています。当初は木という自然の素材を使う弊社製作物の魅力をより分かりやすく伝えられるようにショールームを建てる計画を立てていました。しかし、訪問してくださる取引業者様から常日頃ロケーションのよさを褒めていただく声を多くいただいていたことから、作品を展示するだけの場ではなく、作品を使った空間を開放すればこの素晴らしい景観を多くの方に共有できるのではないか、より発展的で複合的な施設になるのではないかという思いが強くなりました。そこでレンタルオフィスとコワーキングスペースを加えた計画を練り直し、さらに近辺に飲食店やコンビニなどがあまりないことを考慮して、じっくり仕事に向き合えるよう食事も提供できるカフェを併設することにしたという流れです。

― Mushroomの特徴はどういったところでしょうか。

何と言っても目の前に郊外ならではの田園風景が広がっている点ですね。季節によって田んぼの色は変わり、冬場は雪が降って白銀の世界になります。四季を間近に感じられる空間で仕事をしたり食事をしたりできるのがMushroomの大きな特徴です。オープンデッキはカフェとして運営していますが、レンタルオフィスやコワーキングスペースの利用者が食事だけでなく仕事の合間に息抜きで室内から出てきてくつろぐなど、自由に使っていただけるスペースにしています。

レンタルオフィスの「クリエイティブ・ルーム」とコワーキングスペースの「クリエイティブ・デスク」の内装にはヒノキをふんだんに使用し、弊社の京組子による装飾も行っています。作品を納入する機会が多いリッツ・カールトンやフォーシーズンズ、ハイアットホテルといったラグジュアリーホテルと同じように装飾することで、高級ホテルに滞在しているような雰囲気にひたっていただきながら仕事ができるというのも特徴の一つです。利用者の皆さんからは「ヒノキの香りがいいですね」とよくお褒めいただき、市民投票で決まる京都市の令和4年度『京都のステキな木の空間』事務所・店舗部門で第4位に入るなど、過ごしやすい空間という評価をいただいているのがうれしいですね。

都心からは移動距離があるので、空いた時間に立ち寄って効率的に作業をこなして次の仕事に向かうといった使い方は難しいですが、ラグジュアリーホテルの内装を再現した空間に身を置き、外に目を転じるとのどかな風景が広がっているという環境に一日腰を据えてワーケーションのように過ごすことで、発想が豊かになって作品づくりのいい刺激になるのではないかと感じます。

― Mushroomを利用されている方はどのような方がいらっしゃるでしょうか。

さまざまな業種の方にご利用いただいています。30~40代の利用者が中心ですが、大学生が50人ほどの有志でカフェを借り切ってバーベキューパーティーをされたことや、親子で利用される方もいました。

クリエイティブ・ルームやクリエイティブ・デスクは、パソコンを使うお仕事の方はもちろんのこと、小説や絵、書などを創作されるクリエイターの方々の利用も多いです。ミュージシャンがクリエイティブ・ルーム3室を貸し切って(借り切って)レコーディングされたこともありました。都心にはない自然を感じられるロケーションや弊社の作品で装飾した空間がクリエイティブな発想や作業にプラスになるとうれしいですね。

― Mushroomの今後の展望について教えてください。

弊社の業界的なつながりや人脈を利用者と共有できる可能性を広げていきたいです。クリエイティブ・ルームやクリエイティブ・デスクで仕事をすることで私たちや他の利用者とつながったり、利用者同士がコラボするきっかけづくりになったりする場として活用してもらいたいですし、私たちもクリエイターの皆さんをサポートしていきたいという思いがあります。

加えて京北エリア自体を盛り上げる役割も意識したいですね。カフェのメニューは地産地消を意識していて、たとえばイチ押しメニューの「京北バーガー」は京北で採れた無農薬有機野菜と近所のパン屋さんのこだわりが詰まったバンズ、京北の名店の和牛パテと地域の選りすぐりの食材を使っています。弊社の京組子の素材も京北エリアの木材が中心です。地元で生産されるものを使い、地元の方が働き憩える場をつくる活動が最終的に地域貢献へとつながるといいですね。

都心にあるコワーキングスペースと比べると、手軽に利用できるコンビニエンス感はやや薄いかもしれません。利用した人は100%ロケーションを絶賛してくださいますし、見学されて「ここで仕事したいなあ」と言っていただくことも多いのですが、予約して車やバスで移動して一日ここで過ごすにはややハードルが高くてなかなか一歩踏み出しにくいのかなという印象ですね。

ただ、ロケーションのよさは、いい意味で仕事と遊びの境界を曖昧にできる利点があると考えています。仕事をするだけでなく、仕事に加えてバーベキューを楽しんだり敷地内でソロキャンプをやったりとMushroomでは利用される方ご自身が過ごし方を自由にプランニングできるんですね。この1年間で中秋の名月の夜や流星群の鑑賞会、ライブコンサートなどのイベントを開催して多くの方に楽しんでいただきました。クリエイティブ・ルームなどで集中して仕事をしたい方への配慮をきちんとした上で、こうしたピンポイントのイベントを今後も企画し、もっと多くの方に気軽に利用してもらってさまざまなつながりが生まれる場に育てていきたいです。

 

― Mushroomが立地する京北エリアの魅力について教えてください。

Mushroom周辺は、植林された杉やヒノキが整然と並んだ人工林や田園風景が広がっていて、ビニールハウスや鉄塔、電柱などの人工物がほぼ視界に入らないというところが最大の魅力です。還幸祭で有名な山国神社や、近年パワースポットとして知られるようになった賀茂神社が近くにあり、訪れる人も増えてきていると感じます。

四季の移り変わりを肌で感じられて退屈しないですし、最近人気のグランピングやサウナなどの施設が増えてきているのでアイデア次第でいろんな遊びが体験できますよ。自分なりのコツさえつかめばオンとオフをうまく切り替えて過ごせるエリアではないでしょうか。