
FUFU
Food Urbanite Factory Umekoji
JR嵯峨野線 梅小路京都西駅から徒歩約10分。京都中央市場の西に位置する朱雀宝蔵町に、2025年、食品加工事業を小さく始めて、大きく育てるための専用キッチンスペース「Food Urbanite Factory Umekoji(FUFU)」がオープンします。廃業したかまぼこ工場をリノベーション中のこの施設は、自分で食品のプロダクトを作り、それを世の中に広めたい方が小さな1歩を踏み出せるよう設計した、フード関係のスタートアップにとって理想的な環境が整っています。
今回のインタビューでは、FUFUの企画・運営を行う株式会社めいの代表取締役で、不動産脚本家として活躍する扇沢友樹様にお話を伺いました。

株式会社めい
代表取締役 扇沢友樹様
― メディアにも多く取り上げられている扇沢さんですが、改めて、これまでの梅小路エリアでのご活動、FUFUの設立経緯について教えてください
2014年頃から、京都中央市場の場外エリアである朱雀宝蔵町で、木工や鉄工などの工房付きシェアハウスを運営していました。このエリアは、もともと食品加工や卸売業者が多く、多少の騒音には寛容な土地柄です。作品制作時に大きな音が出がちな工房付きシェアハウスは、その特性を活かした試みでした。
シェアハウス運営は終了しましたが、2019年には同じようなコンセプトで、共同アトリエ付きのレジデンスとホテルが一体化した「KAGAN HOTEL」を開業しました。このホテルも、国内外の多くのアーティストに利用していただいています。
(KAGAN HOTELの様子)
少し話は逸れますが、私は「不動産脚本家」という肩書きを名乗っています。これは、土地や建物の歴史や特性を深く読み解き、まるで脚本を書くように、不動産の新たな価値や存在意義を創造していく、という想いを込めたものです。シェアハウスやKAGAN HOTELは、騒音への寛容さという地域特性に着目した企画でしたが、地域への貢献という点では、まだ不十分だと感じていました。そこで、この地域をより活かし、新たな価値を生み出すにはどうすればいいかと考え、今回「食」のテーマにたどり着きました。市場の場外という歴史と特性を活かすには、これしかない、と。
コロナ禍で中食(なかしょく)文化が一気に盛り上がり、加工食品の販売販売や地方の特色を活かしたクラフト飲料の製造販売を行うスタートアップも次々と誕生しました。こういった企業は、賃料などの関係から拠点を郊外に構えることがほとんどです。しかし、郊外の拠点は、賃料は安いのですが、そこに通勤する時間とコストがかかる。これを考えると、賃料は少々割高であっても、市内中心部に拠点を持ったほうが、トータルで考えるとメリットが大きいのでは、とかねてより考えていました。2023年に「廃業したかまぼこ工場を再利用しませんか」という話をいただいたとき、「やります」と即答したのは、これらの経緯からでした。
朱雀宝蔵町はJR梅小路駅のすぐ近くで、車でのアクセスもしやすい。この地の利を活かせば、フード関係のスタートアップにとっても、便利な拠点が作れるはず。その後、少しずつプロジェクトを進め、2025年中にはオープンできるところまでたどり着きました。
― FUFUの特徴について教えてください。
食品関係のビジネスは、ミニマムスタートが難しいです。水回りが必要となるため、元々飲食店だった場所を借り、内装等の工事をしてスタートするか、水回りの設備工事が可能なオフィスビルを借り、キッチン等の設備工事を手掛けるか、が主な手法となります。これらの場合はいずれも、工事期間中も賃料が発生したり、退去時は施した設備を撤去する必要があること、事業が拡大し手狭になった場合においても、設備投資の減価償却が終わる前に移転せざるを得なくなるケースもあり、とにかく多額のコストがかかるため、食品関係のビジネスを小さく始めることはなかなか厳しいのが現実です。
ですが、FUFUは、すでに水回りの工事を行った状態を基本として貸し出し、退去時も水回りの撤去工事が不要。例えば冷蔵庫等の必要な機器は入居者で搬入し、営業許可を取得する必要はありますが、最短1カ月程度で事業をスタートすることができます。広さは13㎡から58㎡まで、さまざまなニーズに対応できるよう、工程ごとにさらにスペースを分割できる区画も用意しています。
また、手狭になった場合においても、空きがあれば、より広い区画への移転も可能。前述の「多額のコスト問題」をクリアし、合理的かつ経済的に、食に関わる「やりたい」を小さく始めて大きく育てることができます。
その他、1階には、飲食許可を取ったカウンタースペースを設け、テストショップ用のスペースとして、試食会、試飲会、料理教室など、さまざまな用途に活用も可能です。また、デスクワーク専用のオフィススペースでは、入居者同士でコミュニケーションが取れ、横の繋がりも作りやすくなるよう設計していますし、キッチンスペースに入居をしていない方も利用可能な会員も募集予定です。
FUFUを企画していく際、食品加工事業者へのヒアリングを行ったんですが、自社製品のプロモーションをできる場所が欲しいという声が多かったんですね。特にスタートアップは、製品の知名度が低く、売れるかどうか不安に感じる人も多い。この不安を解消するには、人を集めて実際に試してもらうというプロモーションが一番です。一般的な食品加工場だと、テストショップを行うには別途場所を確保しなければいけませんが、FUFUだとその必要はありません。交通の便もいいので、集客もしやすいでしょう。
― 今後の展望についてお願いします。
2025年中のオープンに向け、ようやく解体工事が終わり、きょう撮っていただいた写真は、1番ワイルドな状態です。入居者の募集も行っており、公式サイトからの問い合わせも月2~3件あるほか、私たちからもFUFUのコンセプトに共感してくれそうな事業者様に積極的にアプローチしています。「自分で食品のプロダクトを作り、それを世の中に広めたい」という熱意を持った方々に、「最初の一歩を踏み出すなら、FUFUがいい」と思っていただけるような存在になればうれしいですね。
あとは、FUFUがある場外エリアのポテンシャルを最大限引き出せるような取り組みをしていきたいと考えています。たとえばカバン作りなら兵庫県豊岡市というように、産業の代名詞になるような地域がありますよね。そういう地域のように、京都はもちろん他府県や海外からも「食品加工といえば、京都の梅小路にいいエリアがあるぞ」と認知され、たとえば移住を考える人が増えたらうれしいなと。
「梅小路」と一口に言っても、梅小路公園周辺は、公園や水族館、鉄道博物館があって、親子連れを中心に賑わうポップな印象のエリアです。一方FUFUがある場外エリアは少しディープな雰囲気が漂うエリア。言わば、「表」の梅小路公園に対して、「裏」の梅小路です。この独特な雰囲気を活かし、手作り感溢れるクラフトショップが集まるエリアを作れたらいいなとも考えています。質の高い道具を扱うお店、珍味を扱う専門店などがあって、そこにFUFUのような新しい食を生み出す施設もできて、定期的に新商品を紹介するテストショップが開かれる。梅小路公園周辺で遊ぶのもいいけど、「場外エリアに行けば、面白いものや美味しいものが見つかるらしい」と認知され、一般の方々が気軽に立ち寄って楽しめるような魅力的な場所になる可能性は十分に秘めていると思っていますし、そうなれば理想的ですね。
FUFU
Food Urbanite Factory Umekoji
URL:https://f-u-f-u.com/
(入居のお問合せも、上記WEB内のお問合せフォームにてお願いします)
住所:京都市下京区朱雀宝蔵町56
56 Hozo-cho Suzaku Shimogyo-ku Kyoto City
アクセス:JR 梅小路京都西駅 徒歩 5分
SNS:FUFU準備室 https://www.instagram.com/fufukyoto/