
Share Lab EVER SHIMOGAMO
京都市左京区
Share Lab EVER SHIMOGAMO は、2025年4月にオープンした、京都市左京区にあるシェア型ウェットラボです。P2/BSL2対応の共通実験室があり、ベンチ単位で借りることができ、京都市内でも貴重なシェアラボとして国内外から注目を集めています。
このラボについて「スタートアップの種が芽を出す場所にしたい」「スタートアップエコシステムの中心にしていきたい」と語るのは、Share Lab EVER SHIMOGAMO を運営するEVER株式会社代表取締役である都地様と、代表顧問である松澤様。今回はお二人に、設立の経緯や施設の特徴、今後の展望などについてお話を伺いました。

左:EVER株式会社 代表取締役 都地様
右:EVER株式会社 代表顧問 松澤様
― Share Lab EVER SHIMOGAMOをオープンされた経緯について教えてください。
都地かねてから、京都市内にラボが不足していることに課題意識がありました。レンタルラボもシェアラボも、京都市内にあるのはありますが、立地や研究内容、設備投資の資金面等、ライフサイエンス系のスタートアップが気軽に使えるようなラボは少なく、需要が満たせていない状況であることに課題感を持っていました。学生時代から公私共に親しくさせていただいていた松澤先生と、この課題についてよく話をしていました。
松澤都地さんとの出会いは、都地さんが大学生の頃からなので、もう7〜8年以上の付き合いになります。私は、サンディエゴで21年間研究をしていたことがあるのですが、実はサンディエゴと京都はいろいろ似ている点があるんですね。たとえば、両方とも有名な大学が多くあり、市内には大学関係者も多く住んでいます。サンディエゴは大学の周辺にラボが集中しているんです。そして1,000社以上のスタートアップがあり、エコシステムを形成していて、アメリカを代表するバイオクラスターになっている。
一方京都は、研究者が自分の研究成果を社会実装しようとしたときに、都地さんが言う通り、さまざまな高いハードルがあるんですね。まず、実験をしたり、有体成果物を保管したりできるラボが少ない。大学の先生なら大学内のラボを使えるかもしれませんが、若く資金もない若手の研究者にはそれは難しい。この課題を解決すれば、京都でもサンディエゴ同様のスタートアップエコシステムを作れる可能性が十分あると考えています。そこで、ベンチ1つからでもスタートアップできるようなシェアラボを作ろう、という話を都地さんとしたのが2年くらい前でした。
都地シェアラボ開設を目指し、まず大変だったのが物件探しでした。もともと弊社は左京区でシェアオフィスやシェアハウス事業を行っていたので、左京区には京都大学や京都府立医科大学などの大学があり、大学関係者も多いことを体感していました。だから、ここ左京区にシェアラボを作れば、スタートアップエコシステムの起点にできるのではないかと考えていたんです。
そして転機となったのは、弊社のシェアオフィス Whatever SHIMOGAMO の地階を活用できないかという話が持ち上がったことですね。地上1,2階は弊社が運営管理しているので、地階も弊社が活用したほうが断然使い勝手がいい。そこで地階を改めて見ると、もともとアンティーク家具ショップとして使われていたこともあり、広さが十分ある上に、必要な設備もある程度揃っていました。そこで地階を改装し、シェアラボを作ることとなりました。



― Share Lab EVER SHIMOGAMOの特徴はなんでしょうか
都地京都大学や京都府立医科大学から徒歩圏内、自転車に乗れば5分で移動できるという立地が最大の特徴です。たとえば幹細胞やiPS細胞を持ち運ぶのに15〜20分以上の時間がかかる場合は、液体窒素を使うなどして厳密な温度管理をしなければいけません。しかし、5分で移動できるなら未凍結状態でも大丈夫です。
松澤このシェアラボの利用者は、内容と費用の事前相談は必要ですが、京大の実験機器の利用も可能です。このシェアラボで実験し、その成果物を京大へ持って行って測定し、またこのシェアラボに帰って実験の続きをしたり、レポートにまとめたりできる。これは非常に大きなメリットです。私自身、京大とこのシェアラボをよく行き来しているのですが、この利便性は素晴らしいと感じています。
都地設備面では、P2/BSL2に対応していて24時間利用が可能、1階のラウンジエリアも使えるといったことも特徴ですが、何よりのこだわりは「精神的なゆとりをもって実験できる空間づくり」です。
たとえばベンチは、動線を確保し、作業や思考の最中に気持ちの余裕ができるよう、ゆったりと余裕も持って配置しています。実験作業は立ち仕事も多いため、立ったままの作業がしやすいよう、一般的なベンチより高めにも設定しました。その他、フェイクグリーンを飾ったり、アクセントに深い色の木目を採用するなど、かっこいいラボ空間を目指しました。
一般的にラボは大なり小なり圧迫感が漂いがちです。しかし、ラボは研究の場であると同時に研究者にとっては労働の場でもあり、アイデアやひらめきが必要な場でもあります。だから、労働の場としては機能性の追求、アイデアやひらめきの場としては空間デザインも考える必要があると考えました。松澤先生がいらっしゃったサンディエゴにはデザイン的にも優れたラボが多く、そういうラボも参考にしながら作っていきました。
― Share Lab EVER SHIMOGAMOの利用者はどのような方が多いのでしょうか。また、どのような方からの問い合わせが多いのでしょうか。
都地想定通りでいくとライフサイエンス系からの問い合わせです。開設から4カ月経過した現在、フリーアドレスでご契約いただいているのが2社、ベンチ契約をしていただいている方が6社いて、すべて日本のスタートアップの方です。想定外としては、日本だけでなく海外の方からも多いこと。特に多いのがアメリカ、ドイツ、イタリアの方です。このあたりは「京都」という町が持つブランド的な価値も感じます。また、大企業のサテライトラボとしての問い合わせも多いですね。
松澤ライフサイエンス系への参入を検討している企業からの問い合わせもありますね。
都地そうですね。あとは、研究者採用やインターンに利用したいという人事担当者からの問い合わせもあります。応募者に実際にラボで実験や研究のフローなどを体験してもらって、そこで採用を考えたいというニーズです。このようなニーズがあるのは正直驚きましたが、多様なニーズも汲み取り多くの企業を巻き込むことができれば、スタートアップにとってもいいイノベーションが起こせるのではないかと期待しています。
― 今後の展望について教えてください。
松澤ラボというハコを作ることは重要ですが、それだけではスタートアップは育ちません。お城があっても、その周辺の城下町までできないと意味がないので、ノウハウ、ノウフーも重要なんですね。人のつながりも大事ですし、起業を何回も繰り返していてお手本になるようなアントレプレナーも必要です。そこで、シェアラボを作って終わりではなく、京大や京都市、京都府等と連携し、スタートアップを国内外から誘致できるようなショーケースイベントなども開催予定です。
都地私たちが目指しているのは、「スタートアップの種が育つ最初の畑」です。大学が近く研究しやすいこの場所で、安価で利用できるラボを活用して、まず若手の方々のアイデアの種が芽を出す。そして大きく成長して、京都市内のより大きなラボに移行していく。そのようなエコシステムの入り口として機能できたらと考えています。
スタートアップが育つようなサポートも今後は充実させていく予定です。たとえば医薬品のスタートアップだと、臨床試験から承認されるまで様々なフェーズがあり、フェーズごとに士業の方などとのネットワークも必要になってきます。しかし、士業の方々が医薬品スタートアップのフェーズに応じた適切なサポートができるかというと、そうは限らない。そこで京都大学と連携し、士業の方や経営管理者、ベンダーさんを集め、シュミレーション型セミナーなどの開催を考えています。「こういうスタートアップがこういうフェーズにあるとき、どのようなサポートが必要か」などのお題に沿って学ぶセミナーなので、より実践的な学びができ、スタートアップのサポートにも役立つものになると考えています。
― 本日はありがとうございました。今後の展開も、楽しみにしています!
<拠点概要>
Share Lab EVER SHIMOGAMO
https://ever-shimogamo.com/
住所:〒606-0802 京都府京都市左京区下鴨宮崎町119-1
(受付:1階、シェアラボ:B1階)
アクセス:叡山電鉄・京阪電車「出町柳」駅より徒歩6分
営業日:土日祝休み ※ラボのプランによっては年中利用可
営業時間:9:00 〜 17:00
内覧相談・お問合せ:フォームよりご連絡ください。
TEL:075-706-1133(平日 9:00 〜 17:00)