特集・コラム

ZET-BASE KYOTO

ZET-BASE KYOTO


京都府向日市

「ZET-BASE KYOTO」は、再開発が進むJR向日町駅から徒歩2分の距離にあるレンタルオフィス&コワーキングスペースです。利用条件は「脱炭素テクノロジーに関連する企業や起業を目指す方及びそれらを支援する方、地域の企業や研究機関等との協業・連携を希望する方」。今回は、このユニークな利用条件の「ZET-BASE KYOTO」を運営する株式会社ツクリエの代表取締役である鈴木英樹様と、入居者である株式会社Eco Forest Friendly代表取締役の芦田拓弘様にお話を伺いました。

株式会社ツクリエ 代表取締役 鈴木英樹 様
株式会社ツクリエ
代表取締役 鈴木英樹 様

運営者インタビュー

― 株式会社ツクリエがZET-BASE KYOTOを運営することになった経緯を教えてください

鈴木ZET-BASE KYOTOは、脱炭素に挑むスタートアップを支援するインキュベーション施設です。京都府の「ZET-valley構想」(※1)の推進拠点として、専門家によるメンタリングやネットワーキング支援等を行っています。
2025年4月に、京都銀行 向日町支店・東向日町支店が入居するビルの3階にオープンしました。

京都が創業の地である私たち株式会社ツクリエは、スタートアップ支援のほか、全国20か所のインキュベーション施設、レンタルオフィス、コワーキングスペースの運営を行っており、中には行政から委託を受け運営している施設もあります。
京都府が、ZET-BASE KYOTOの運営者公募を行っていることを知り、以前から脱炭素分野に興味があったので応募したところ、施設運営者として選んでいただいたというのが経緯です。

ZET-valley構想(※1)
京都府では、「ゼロカーボンものづくりによるゼロカーボンまちづくり」をコンセプトに、脱炭素社会の実現を目指す「ZET-valley構想」を策定。その一環として、向日市を中心としたエリアがZET-valleyリーディングゾーン、つまりゼロカーボンものづくりの社会実装やスタートアップの拠点作りを行うエリアとして位置づけられています。

― ZET-BASE KYOTOにはどのような特徴があるのでしょうか

鈴木まずは、入居者を脱炭素分野のスタートアップや企業に限定していることです。一見ニッチな条件に思えるかもしれませんが、すでにオフィスは7部屋中3部屋ご契約いただき、コワーキング会員は10名程度いらっしゃって、予想以上の手応えを感じています。(2025年7月現在)
次に、京都銀行さんの支店が入居するビルにあること。スタートアップがまず必要とするものは、顧客と資金です。京都銀行さんのファイナンスに加え、親会社である京都フィナンシャルグループにベンチャーキャピタル機能があるので、資金面で何かと相談や連携が取りやすいのも特徴のひとつです。

設備面の特徴としては、建物自体がZEB(Net Zero Energy Building=ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)といって、消費電力と発電する電力がイコールになる建物になっています。具体的には、ビルの外壁や屋根には太陽光パネルが設置され、発電できるようになっています。発電すると同時に電力消費を抑えなくてはいけなくて、たとえば電力を非常に消費する空調をどこにどれだけ配置するかなどはかなり悩みました。

内部は、オフィスエリアである「ネストゾーン」とコワーキングエリアである「フォレストゾーン」に分かれています。フォレストゾーンはその名の通り、みんなが集まる森をイメージして、グリーンを多く配置しました。実は、向日市を中心としたエリアは周辺に森林が少ないという特徴があります。これはZET-valleyリーディングゾーンに指定された理由のひとつでもあるのですが、こういった事情から、オフィス内は緑を多くしたいという気持ちもありました。

― 今後、ZET-BASE KYOTOではどのような活動やスタートアップ支援をされていく予定でしょうか

鈴木スタートアップ支援としては、入居者同士はもちろん、企業や大学、研究機関などとのマッチングや交流促進を行っていく予定です。ZET-BASE KYOTO周辺には、ニデックさんや村田製作所さんなどの大企業があります。さらに大学・研究機関も多くあり、うまくマッチングができれば、より新しいアイデアや技術が生まれる可能性は十分あります。
また、私たち株式会社ツクリエは全国規模でスタートアップ支援を行っているので、そのネットワークやノウハウも活用した支援やマッチングも可能です。それから、非入居の会員という区別を設け、入居企業との交流やマッチングを促すことも検討しています。たとえば大学の先生や大企業の方などにこのような会員になっていただければ、より幅広いマッチングが実現できるでしょう。

グローバルとローカル両面で自分達の活動を知ってもらう取り組みも考えています。まずグローバルという点でいうと、ZET-BASE KYOTOの配信設備を利用してオンラインイベントやピッチを行い、どんどん海外に活動をアピールしていきたいですね。海外の企業やスタートアップの入居促進も考えています。JR向日町駅は京都駅から3駅と立地的にも良く、駅周辺は現在再開発が進んで、令和10年度には新しいまちびらきを迎える予定です。京都市の人から見ると向日市は郊外の一都市ですが、外国の方から見るとここもまた「KYOTO」なので、ネームバリューもあります。こういったことを考えると、外国の方にも興味を持ち、利用していただける可能性は十分あるでしょう。

ローカル面では、ZET-BASE KYOTOの存在や活動を知ってもらえる活動も行う予定です。京都銀行さんという地域に根ざした銀行の建物に入っている以上、あそこの施設は何かよくわからない、出入りしている人たちも何をしているかわからない、という状況は避けたいと考えています。脱炭素は地域の方々にも無関係ではないテーマですし、将来的には入居者の方が展開するサービスを住民の方に体験していただくことなどもあるかもしれません。すでに、向日市を拠点に活動するプロ卓球チームによる卓球教室や、みんなでおにぎりを作って食べるおにぎり交流会などを開催しましたが、今後はさらに、地域の子どもなどに向けた起業家教育などを行いたいですね。

― 株式会社ツクリエは、全国でインキュベーション施設などを運営していらっしゃいますが、京都という街や京都のスタートアップについてどのような印象をお持ちですか

鈴木現在の本社は東京ですが、冒頭でご紹介の通り、創業は京都でした。京都は文化や歴史に注目が集まりがちですが、実はアカデミアが非常に強い学生の街であり、大企業も多い産業の街だと考えています。文化と歴史、アカデミア、産業というバランスも取れている街ではないでしょうか。また、京都の人はふところに入るまでは時間がかかるかもしれませんが、一度入ってしまえば非常に頼りがいがある、何かあると助けてくれる人たちだと思います。

入居者インタビュー

― ZET-BASE KYOTOで京都産の木材を使った家具や木製製品の製造、販売を行う株式会社Eco Forest Friendly代表取締役の芦田拓弘様にお話しをお聞きします。

株式会社Eco Forest Friendly 代表取締役 芦田拓弘 様
株式会社Eco Forest Friendly 代表取締役 芦田拓弘 様

芦田実家は、祖父の代から林業を営んでいます。しかし、木材を伐採することから環境破壊というイメージを持たれやすく、また製品である丸太が最終消費者の手に渡るまでには多くの中間業者を挟むため、具体的な認知がされにくいという課題があります。そこで「林業を通じて人と森を繋げる」というミッションを掲げて、株式会社Eco Forest Friendlyを立ち上げました。京都EcoPayという、利用すると売上の一部が森林保育事業に寄付され、CO2削減にも役立つQR決済サービスなどを提供しています。

ZET-BASE KYOTOは脱炭素分野の企業やスタートアップが集まる場なので、同様の事業をしている人たちとのつながりが生まれることを期待して入居を決めました。ZET-BASE KYOTOは、森をイメージした内装で、集中しやすい環境だと感じています。また、ただのコワーキングではなく、ゼロカーボンをテーマにしたコミュニティが作れる場所というのは非常に珍しく、それが京都にできたことは非常によかったとも思っています。京都府とも関係がある場所なので、今まではなかなか持てなかった行政とのつながりも持てるし、京都銀行さんと同じ建物なので銀行とのつながりもできるというのも魅力的ですね。

― 本日はありがとうございました。今後の展開も、楽しみにしています!

左:株式会社Eco Forest Friendly 代表取締役 芦田拓弘 様 中:株式会社ツクリエ 代表取締役 鈴木英樹 様 右:株式会社モクジヤ 代表取締役 鈴木粋様(ZET-BASE KYOTO 広報協力)

左:株式会社Eco Forest Friendly 代表取締役 芦田拓弘 様
中:株式会社ツクリエ 代表取締役 鈴木英樹 様
右:株式会社モクジヤ 代表取締役 鈴木粋 様(ZET-BASE KYOTO 広報協力)

<拠点概要>
ZET-BASE KYOTO
https://zetbase-kyoto.com/
住所:〒617-0002 京都府向日市寺戸町山縄手21番1 京都フィナンシャルグループ MUKOUビル 3階
アクセス:JR向日町駅 徒歩2分 | 阪急東向日駅 徒歩7分
営業日:365日(スタッフ対応は平日)
営業時間:24時間営業(スタッフ対応時間:平日9:30~17:00)
TEL: 075-323-7737(受付時間:平日9:30~17:00)
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