特集・コラム

2026年9月14日

第17回 京都エンジェルコミュニティ交流会 開催報告

2026年7月16日(木)、リーガロイヤルホテル京都にて、第17回京都エンジェルコミュニティ交流会を開催しました。交流会では、まずスタートアップ7社によるピッチと質疑応答が行われ、続いて、約1時間の情報交換会が行われました。登壇企業のプロダクトの一部が展示された会場では、参加者が各社のピッチの内容に真剣に耳を傾ける姿が見られました。また、情報交換会では、飲み物を片手にスタートアップと参加者が談笑する輪があちこちに広がり、活発な意見交換が行われていました。各社のピッチの内容及び質疑応答の要旨は、以下のとおりです。

株式会社amulapo 松広 航 様

松広 航 氏

株式会社amulapo 取締役COO 松広 航 様

弊社では、「わくわくは空にある」という理念のもと、ロボット、CG、VR/AR、XRなどの先端技術を活用して教育的な宇宙体験コンテンツの開発や研究開発支援を行い、宇宙関連の技術や知識をわかりやすく伝える活動に取り組んできました。最近では、老舗旅館の京料理と宇宙食のコラボレーション『京都発「宇宙食を美食に」G+Astronomy project(ガストロノミー・プロジェクト)』を始めました。このプロジェクトを通じて、食(Gastronomy)と宇宙(Astronomy)をつなぎ、京都の伝統・文化・技を未来へ継承し、宇宙へ届けることを目指しています。

-XRの市場はゲームを中心に形成されています。食分野も含めて、エンターテインメントに寄せても良いのでは。現在、京都ではスローでスモールでスペシャルな観光を進めるネットワークがあるので、そこに参加して支持者を増やしたほうが早いのでは。

松広:エンターテインメントとエデュケーションが融合した「エデュテインメント」に価値があると考えており、楽しい体験と同時に学びがある分野としての展開を考えています。観光についてはまだ十分な知見がなく、アドバイスをいただければと思います。

-事業は何名で行っているのか。取り組みは多いが、事業を絞る必要があるのではないか。

松広:役員3名と従業員4名、業務委託やインターン生として100名以上が関わっています。ビジネスモデルについては経営上の課題のひとつであり、バランスを考えながら、取り組みが事業モデルとして成り立つか、どの事業に集中するか判断する必要があると考えています。

ACK Craft株式会社 海野 弘成 様

海野 弘成 氏

ACK Craft株式会社 代表取締役 海野 弘成 様

弊社が開発した「ツギキAI」は、属人的な知見や暗黙知も含めた引き継ぎを可能にするサービスです。本サービスでは、パソコン内のアプリが画面を記録し、その内容をパソコン内のAIが分析した上で、ユーザーにヒアリングを行い、マニュアルやAI向けのコンテキストデータを作成します。ヒアリングにより、画面の記録だけでは把握できない個人的なノウハウや知見を引き出せることが特徴です。引き継ぎだけでなく、業務の効率化や生産性向上、担当者個人の経験や判断が大きなウェイトを占める業務の平準化に効果的であり、利用対象とする業務としては、カスタマーサポートやビジネス文書作成を想定しています。

-引き継ぎは頻繁に発生しない。ビジネスモデルとして考えると、サービス単体ではなく、コンサルティングを含めたパッケージとして提供するという方向性になるのでは。

海野:同感です。業務改善を検討している企業に、コンサルティングを含めて提案する方向を現在検討しています。

-中小企業にとって最も平準化できていない業務は営業だが、営業担当者は成果が評価に直結するため、ノウハウの共有を嫌がる。会社全体の営業力強化のために、営業ノウハウの全体へのフィードバックに活用するという方向のほうが市場が大きいのでは。

海野:その方向は今後模索していきたいと思います。サービスとして提供するというよりは、コンサルティングの中で営業や評価精度への活用法として提案し改善していただくというのが理想的なのかもしれません。

PEイノベーション株式会社 坂口 充弘 様

坂口 充弘 氏

PEイノベーション株式会社 代表取締役社長 坂口 充弘 様

弊社では、環境に優しいプリンテッドエレクトロニクス技術「Perfect Dry」を開発し、商標登録を行いました。100%リサイクル銅を使った銅ナノインクを印刷して回路を作る技術であり、設備投資が抑えられることに加え、製造時に廃液が発生せず環境負荷が低い点が特徴です。最近では、GAFAMを含む企業向けにAIサーバー用電磁波シールドの試作出荷を開始しました。福知山市のデモセンターでは、印刷から検査までの量産工程を実演できるほか、国内外の企業に対して印刷技術提案を行っています。2027年度には量産工場を立ち上げ、事業規模と雇用の拡大を目指します。あわせて、ウェアラブル機器、医療用電極、AIロボット向けなど、付加価値の高い領域へのサンプル提供も開始しており今後本格的な展開も計画しています。

-実現できるラインアンドスペースはどの程度か。

坂口:量産レベルで100ミクロンです。

-100ミクロンレベルだと、ピッチイベントで発表するよりも、企業に持ち込んだほうが早いのでは。

坂口:はい、技術開発当初は、門前払いばかりだったが、現在は、数社でサンプル出荷やRFIDタグの試作も始まるなど、ようやく話を聞いてもらえる企業も増えてきた。供給体制面も整いつつあるため、今後は、海外の展示会への出展も含め、積極的にPRしていこうと考えています。

アクアス株式会社 浅岡 広彰 様

浅岡 広彰 氏

アクアス株式会社 代表取締役 浅岡 広彰 様

医薬品に有用な成分の宝庫である自然界には、未解析の成分が数多く存在します。弊社が独自開発した「AqasPrime®」というナノテクノロジーを活用すれば、わずかな試料から多くの成分を分離・分析することが可能です。わずか10μgの高麗人参の試料から、250種類以上の成分を分離した例もあります。これにより、希少・高価な天然物も、研究対象として活用できるようになりました。公的機関、大学・研究機関、製薬企業からも高い評価をいただいています。今後は、天然物の構造情報とバイオ活性情報を統合し、創薬分野で活用が進むAIの学習・解析に使える質の高いデータベースを構築することで、生命科学のデータインフラ企業になることを目指しています。

-御社の技術の優位性について、もう少し詳しく教えてほしい。

浅岡:親水性と親油性の両方になじむ特殊な分離基材を使用することで、水と油のいわば「両手」で成分を分離することができます。従来の技術は、油のみ、いわば「片手」で成分を分離するものです。これにより、より細かく成分を分離することができるようになっています。

-カラム、ハードウェア、データベースなどをすべて含めて販売するビジネスモデルだと理解してよいのか。

浅岡:おっしゃる通りです。現状はカラム販売を中心に行っており、次の段階として、ライブラリープレートの提供へ進もうと考えています。

-漢方薬には、すでに効果はわかっているものの、どの成分が働いているかわからないものがある。そのような漢方薬を分析し有効成分を特定することで創薬することもできるのではないか。

浅岡:漢方薬の有効成分を特定できれば、西洋医学の領域での特許取得ができるようになり、創薬や企業にとっての価値創造にもつながるだろうと考えています。

京都MPI株式会社 神谷 勇樹 様

神谷 勇樹 氏

京都MPI株式会社 代表取締役 神谷 勇樹 様

素材分野の量産化に向けた開発プロセスには、成功や失敗のメカニズムが見えにくく、再現性が確保しにくいという課題があります。弊社は、この課題の解決につながる共同研究AIエージェントを提供しています。このAIエージェントには、基礎科学を学習したAIと、物理モデルに基づく計算・検証ツールを組み合わせ、物理的根拠に基づく仮説、数値計算によるシミュレーション、次に行うべき検証実験の設計までを提示できるという強みがあります。また、オンプレミスで安全に運用できるほか、部門を横断する記憶領域を設定することで、AIエージェント同士が情報を交換し、情報のサイロ化を防ぐことも可能です。求める物性を備えた新しい材料組成を提案し、実験で性能を確認した実績もあり、現在進めている大手化学メーカー様とのPoCでも高い評価をいただいています。

-どのような分野の企業からの業務委託を期待しているのか。

神谷:弊社の取締役である田辺が半導体やエネルギーデバイスの研究を中心に行っているため、その分野で最も価値創造ができるのではないかと考えています。もちろん、それ以外の分野にもお役に立てることは多いでしょう。現在は高分子系、有機系、化粧品系企業とのPoCが進んでいますが、まだ様々な可能性を模索している段階です。

株式会社ラテラ 荒磯 慎也 様

荒磯 慎也 氏

株式会社ラテラ 代表取締役社長 荒磯 慎也 様

弊社は無菌の人工培養土「クリスタルグレイン」を開発・販売しています。ゼオライトと無機イオン鉱物結晶錯体を組み合わせた素材で、内部の微細な孔に保持された肥料成分が、水やりのたびに植物に供給される仕組みです。病原菌や虫などが発生しにくく、専用の栄養液を補充すれば繰り返し利用できることも特徴です。根菜類を含む幅広い品種の栽培に対応しており、ニンジンが市販品と比べて約1.6倍の大きさになり、ベータカロテンなども高い値を示した例があります。現在は家庭園芸用として販売していて、昨年の売上実績は約1万4,000個でした。今後は、クリスタルグレインを活用した節水型栽培システムを開発し、水資源や食料自給率に課題を抱える中東地域への展開を目指します。さらに、将来的には宇宙空間での植物栽培にも活用できるよう考えています。

-実際の植物工場ではしばしば、無菌のはずの土壌に一斉に菌が繁殖して土壌が使えなくなることが起きている。このような状況への対応策は何かあるのか。

荒磯:植物工場用については、植物の根を取り除き死滅化して、再生肥料を使用することで無菌化できるというお話をしています。家庭用については、フリーザーバッグに入れてレンジで加熱する方法をお伝えしています。

-ゼオライトにどのような処理をして作っているのか。

荒磯:熱処理した原料に弊社で配合した肥料を流し込み、攪拌して作っています。シンプルに聞こえますが、弊社で特許を取得している技術です。

-菌や虫が発生しにくいというのは、ゼオライトの多孔質の性質を有効活用した技術に思えるが、その理解でいいか。

荒磯:まったく有機物を使っていないということが主な理由です。ゼオライトも、それに染みこませた肥料成分も無機物なので、虫などは成育できません。

E-OPTO株式会社 榎波 康文 様

榎波 康文 氏

E-OPTO株式会社 代表取締役 榎波 康文 様

AIデータセンター内の光通信に使われる膨大な消費電力が、世界的な課題となっています。データセンターの光通信に欠かせないシリコン製の光変調器には、高速化に伴い消費電力も増えやすいという課題があります。そこで私たちが開発したのが、ポリマーとガラスを組み合わせたハイブリッド型光変調器です。シリコン製と比べ約6倍の高速通信ができ、並列使用により光変調器やレーザーの数を減らせるほか、信号補正に必要なデジタル信号プロセッサ(DSP)消費電力も削減できます。これにより、データセンター全体の消費電力を約10%削減できると考えています。現在私たちは、国内外の企業や研究機関と連携し、プロトタイプの開発や量産化に向けた体制づくりを進めています。さらに2026年8月には、アメリカで光デバイスの事業化にDirector of Device Developmentとして携わり、所属企業のNASDAQ上場(直後の企業価値:約1600億円)も経験して得た知見を生かして、京都を拠点に法人を設立する予定です。

-データセンターの消費電力はオールジャパンで取り組むべき課題であり、また、海外でもさまざまな取り組みが始まっている。国内及び海外企業との連携はどう考えているのか。

榎波:日本国内では、大手化学メーカーとNDA契約を結び、量産フェーズでの協業を進めていきたいと考えています。また、材料、半導体プロセス、パッケージングなど、それぞれの分野で優れた技術を持つ企業との連携を広げていきたいと考えています。海外では、米国の著名大学・研究機関との連携が具体化しています。Texas A&M Universityの半導体試作施設では、E-OPTOのEOポリマ光変調器のプロトタイプ試作を計画しており、The University of Texas at Austinとも次世代光デバイスの共同研究・開発に向けた協議を進めています。さらに、世界有数の半導体研究機関であるimecとも技術協議を開始しており、シリコンフォトニクス、CPO(Co-Packaged Optics)、先端パッケージングなどへのE-OPTO技術の展開可能性を検討しています。日本でもRapidusをはじめ、次世代半導体と光技術を融合する取り組みが進んでおり、将来的にはE-OPTOの超高速・低電圧EOポリマ光変調器を、こうした次世代光電融合システムの光エンジンへ展開するため、欧州企業との連携を協議しています。また、台湾企業との面談や、インド、シンガポール企業とのNDA締結など、アジアでの事業開発も進めています。今後は、日本、米国、欧州、アジアの企業・大学・研究機関を結び、プロトタイプ開発から量産、グローバル市場への展開までを見据えた国際的な開発・事業化体制を構築していきたいと考えています。

ピッチと質疑応答の後は、約1時間の交流会を開催。会場のあちこちで、スタートアップの皆様とエンジェルアドバイザーのみなさま、参加者の方々との活発な交流が生まれていました。

ご登壇いただいたスタートアップ7社の皆様、ご参加いただいたエンジェルアドバイザーの皆様、改めて御礼申し上げます。今後も京都エンジェルコミュニティでは、スタートアップと投資家・支援者をつなぐ交流の機会を継続的に企画してまいります。